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スマートフォンの理想と現実

「ガラケー再興」待望論は根強くあるものの…
作りたくても作れない、製造サイドの事情とは

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第44回】 2013年2月20日
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ポスト・スマートフォンを
解くカギがあるかもしれない

 スマートフォンの普及は、すでにフィーチャーフォンに後戻りできないところまで、大きく進んだ。もちろん店頭にはまだフィーチャーフォンが並んでいるし、私自身もスマートフォンとは別に相変わらず愛用しているが、「果たしていつまで使い続けられるだろうか」というのが、偽らざる心境ではある。

 では、消費者がスマートフォン・シフトを「我慢して受け入れなければならない」のだろうか。それは少しおかしい、と私は思う。

 インフラと端末の移行期が同時に発生した以上、トラブルはつきものだという理屈は、分からなくはない。しかし、通信品質をはじめ、電池の保ちや異常終了の頻発といった端末の不具合、あるいは既存顧客をないがしろにするような過剰なインセンティブによるMNP競争--噴出する課題のすべてが、スマートフォンのせいなのだろうか。

 すでに、110番や119番は、ケータイからの発信が半数以上を占めている。ケータイには、いざという時に確実に通信できる手段であることが、期待されているということである。

 そうした、ケータイがこれまで担ってきた役割への期待に、改めて応えようとするのか。あるいはスマートフォンを言い訳に、サービス品質の低下に甘んじるのか。通信事業者の如何を問わず、彼らの判断を、これからスマートフォンへの移行に乗り出すサイレント・マジョリティたちは、じっと見つめているはずだ。

 通信産業とて民間事業者が担うビジネスである以上、そうした期待に今後も応えるのは無理だという判断も、認められるべきではある。しかし、だとしたらこれまでケータイが担ってきた信頼は、別の手段で担保されることを、通信産業はもとより、社会全体で模索する必要がある。

 むしろそこにこそ、新たなビジネスチャンスが存在するはずだ。過去10年以上、私たちはあまりにケータイへの依存を強めすぎてきた。しかし従来のケータイの概念にとらわれない、新たなコミュニケーション手段を模索することが、結果としてケータイを含めた通信産業全般を、前に進める原動力になるような、そんな予感がする。

 日本を含め、世界中で、「ポスト・スマートフォン」というパラダイムを模索する動きが、水面下で進みつつある。もしかすると、それを明らかにしていくためのヒントは、日本の消費者が抱える「ガラケーへの郷愁」の中に、あるのかもしれない。


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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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