化粧品の原材料を製造・販売し、世界25カ国の企業と取引する実力派メーカーが「高級アルコール工業」(千葉県成田市)だ。従業員数は101人と決して多くないが、22年度の売上高は過去最高の75億円、海外売上高比率は20%に達している。同社は日本のバブル崩壊を機に海外に打って出たものの、進出当初は苦戦していた。そこから海外事業が軌道に乗った背景には、「ある老紳士との出会い」があった――。(ルポライター 吉村克己)
化粧品の原材料で
世界と戦う「小さな巨人」
化粧品の原材料として欠くことのできない「エステル」という成分をご存じだろうか。
男性にはなじみが薄いかもしれないが、化粧品に粘度・光沢感・保湿効果などをもたらす物質だ。脂肪酸と高級アルコールの化合物であり、油に溶けることから化粧品原料の油層成分として用いられる。
このエステルに強みを持ち、25カ国・1000社以上と取引している「小さな巨人」が高級アルコール工業(千葉県成田市)である。
社名の「高級アルコール」はお酒とは関係なく、油脂由来のアルコールを指す。従業員数は101人と決して多くないが、2022年度の売上高は75億円。オリジナル製品などが国内外の顧客企業に支持され、海外売上高比率は20%に達する。
独自の存在感を放つ高級アルコール工業は、なぜ世界で認められるまでに成長したのか。その背景には、「ある老紳士との出会い」があった――。