シンガポールがいま脚光を浴びている。一方、長年のライバルである香港は政治的弾圧の影響で苦境に立たされ、中国政府は香港の外資規制を巡り明らかに複雑なシグナルを送っている。
ただ東南アジアの都市国家であるシンガポールは、成功がもたらした予想外のマイナス面である、住宅価格の高騰への対応に追われている。香港を上回る躍進を維持するには、住宅市場の落ち着きを取り戻さなくてはならない。加えて、米中間の競争が激化するなか、中立の立場を明示する必要がある。
シンガポールにはいくつかの明確な利点がある。香港とは異なり、独立した主権国家であるため、シンガポールが中国の気まぐれな政治の風向きに翻弄(ほんろう)されることはない。そうした中国政府の姿勢は、新型コロナウイルス流行下や2019年の民主化デモ後の香港に大きな打撃を与えた。中国政府は香港で国家安全維持法を制定したほか、政府批判者の資産凍結、政治的敵対勢力の一斉逮捕、疫学的観点から効果が疑われる21日間の厳格な隔離措置などを実施。通貨面でも、シンガポールは独自の管理変動相場制を採用しており、香港のドルペッグ制と比べて柔軟性が高い。