日本で官民挙げて半導体産業復活が叫ばれている。ジャーナリストの池上彰氏は、かつて世界を席巻した日本の半導体産業が衰退し、復活できなかった根本原因は「日本型雇用にある」という――。(ジャーナリスト 池上 彰、増田ユリヤ 構成/梶原麻衣子)
半導体のシェアの8割が
日本製だった1980年代
池上 半導体に注目が集まっていて、本誌でも特集していましたね。
増田 経済やビジネス面だけでなく、外交や安全保障面でも半導体がよく話題に上ります。ウクライナ侵攻でロシアは経済制裁を受けていますが、その一環で半導体の輸出規制がかけられています。日本も経済制裁に参加してはいますが、日本から半導体の技術者が中国へ渡っていて、中国で生産された半導体がロシアへ輸出されているのが現状だとか。
池上 今では信じられませんが、1980年代、半導体の世界シェアの実に8割を日本製が占めていました。優秀な技術者が多く、しかも安くて品質が良かったためですが、これに米国が腹を立てたんです。「日本の製品が安過ぎて、米国製の半導体が売れない。ダンピングしているんじゃないか」と。そこで86年に日米半導体協定が結ばれ、日本製半導体の一定の価格以上での販売と、国内の外国産半導体のシェアを20%にすることを強いられました。
日本がこうした厳しい条件を突き付けられて苦戦に陥っている間に台湾や韓国の半導体産業が興り、価格で勝てない日本の半導体産業は没落していきました。その過程で、日本の半導体技術者の一部が海外に渡ることになったのです。
増田 日本で官民挙げての「半導体産業復活を!」の声が再び聞こえてきたのはなぜでしょうか。