中国人密航者は本国で「いい職業」についていた人も多い

 米国に密入国できた中国人を助けるために、米国の中国系住民は生活品や食品などを寄付する支援活動を開始した。

 ロサンゼルスにほど近い郊外都市・モントレーパークで行われた寄付活動に参加した友人は現場の光景に驚いた。

「寄付品を受け取りに来る人が非常に多い。ホテルの周りに長い列ができている。男も女もいて、年長者は50歳前後、幼い者は10代前半。彼らは一人一人身なりが清潔で、顔つきや行動が落ち着いている。想像していた密航者のような苦労を重ね、ろうばいしている姿は見られない」

 友人が寄付活動を呼びかけたリーダーに確認したら、以下のような情報を得た。

「密航者たちは山東、江蘇、浙江、湖北、陝西など多くの省から来ている。中国ではいい職業を持っていた。その多くが中国の自動車免許証を持っていることから、中国では車を所有していたことがわかる。職業もさまざまだ。以前の密航者のほとんどは福建省の農村出身だったが、いまは中学校の教師やエンジニア、保険外交員、金融業従事者、さらには自分で会社を作ったことがある人も多い」

 彼らは皆共通語で交流している。多くの人がパソコンを使い、英語ができる人も結構いる。インターネットを利用して、自分の子どものために米国の学校に入学手続きを申請することもできる。寄付された書籍を選ぶ人もいた。

 しかし、厳しい密航移動や海外の移民生活に耐えられない人も多い。せっかくメキシコに着いたものの、密航ルートの厳しさを実感して、米国への密入国をあきらめ、所持している中国パスポートを使って、そのまま中国に戻った人もいれば、米国に運よく密入国できたが、非合法移民の日常に動揺を覚え、住み慣れた中国に帰る選択をした人もいたという。

『蛇頭』絶版後、その続編を書く必然性はもうないと思っていたが、ひょっとしたら、続編を読みたいという市場ニーズがまた出てきそうな気がした。本棚に飾っている『蛇頭』を見つめながら、ぼうぜん自失になった。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)