近年の東京都心の住宅価格の上昇はすさまじく、一般市民からはため息が漏れる。この東京の状況は、中国・上海の市民の状況と酷似している。中国に始まった不動産バブルは海を越えて、さまざまな都市の住宅価格をつり上げ生活者に打撃を与えた。首都圏で3月に発売された新築マンションの平均価格が1億円を超えたというが、東京をはじめとする日本の主要都市も影響を免れないのか。(ジャーナリスト 姫田小夏)
東京で新築はおろか中古ですら買えない世帯も
首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県)で、3月に発売された新築マンションの1戸当たりの平均価格が1億4360万円に達したという。調査した「不動産経済研究所」によれば、3月は港区の超高額マンションの販売もあり、数字上では前月比2倍以上と極端な数字となったというが、こうした要因を排除しても、都内のマンション価格はすでに数年前から上昇傾向にあった。
都内の不動産仲介会社の営業主任は「ここ数年、新築の購入を断念した層が中古市場に流れて、中古も価格高騰と在庫薄が続いている」と話す。資材価格や物流コストの高騰に加え、用地取得の困難など複合的な要因が絡み、インターネット上ではすでにマンション購入検討者から「買えない」「高すぎる」などの悲鳴が高まっていた。
妻が専業主婦というA夫妻の年収は450万円、「世帯年収の5倍」が購入価格の目安といわれているが、23区内で耐震基準を満たす予算2250万円のファミリー向け中古住宅はもはやないという。背伸びをすればローン地獄が待っており、都内での購入はあきらめるしかない。
東京在住の会社員Bさん(40代前半)は「10年前から気になっていた東京の中古物件が、今では3000万円以上値上がりしている」とネットに書き込んだ。価格は世帯年収で返済できる金額をはるかに超えてしまった。
今の東京の状況は、20年前の中国・上海の状況とよく似ている。上海ではかつて何が起き、今どうなっているのか。