糖尿病と腎臓病……中高年で気にならない人はまずいないだろう。厚労省によれば、糖尿病患者は予備軍を合わせると1370万人、腎臓の機能が少しずつ落ちていく慢性腎臓病患者は、なんと1330万人もいる。10人に1人が罹患(りかん)しているわけだ。糖尿病と腎臓病はセットで悪化していく傾向がある。糖尿病になると腎臓が弱り、腎臓が悪化すると糖尿病も悪化するのだ。だから糖尿病対策は腎臓病対策であり、逆に腎臓を守ることは糖尿病を防ぐことになる。こうした生活習慣病を治すことは難しく、患者数も増える一方だ。そこで食事を見直し、病気にならない、病気の進行を抑えるために「メディカルライス」という医療用の米を食事に取り入れることが研究されている。(サイエンスライター 川口友万)
平均寿命の延びだけでは
説明できない透析患者の増加
腎臓病に一度かかると腎臓は組織が再生しないため、完治することはない。病気の進行を抑えるしかないが、さらに悪化すると透析を受けることになる。2022年の国内透析患者数は35万人。1990年の患者数は10万3000人だったので、この30年で3倍に増えたことになる。しかも日本透析医学会によると、透析患者の約43.7%(2017年度調べ)が、糖尿病が原因の腎臓病「糖尿病腎症」にかかっているという。
こうした予備軍への対応が遅れ、治療が遅れると、最終的に透析を受けることになる。 医師・栄養学者として、国立がんセンター研究所疫学部長や国立健康・栄養研究所理事長など数多くの重職を歴任し、現在、東京農業大学農学部の客員教授として栄養学の研究をしている渡邊昌氏によれば、問題は食事なのだという。
「腎臓病は薬物療法で治すのが一般的です。むくみをとるための利尿剤や腎臓病を悪化させる高血圧を抑える降圧剤、高脂血症の薬などが処方されます。こうした治療法が効いていれば、いくら高齢者が増えたとはいえ、ここまで透析を受ける人が増えないでしょう」
もちろん平均寿命が延びている以上、これまでは透析を受ける前に死んだ人が多かったことは十分にあり得る。がん患者が増えているのと同じ理屈だ。
しかしそれだけが原因だとすれば、透析患者の増加は多すぎるという。日本透析医学会では、高血圧と糖尿病の増加が腎臓病患者を増やしていると見ている。この三つは合併症を引き起こすのだ。
「対症療法では腎臓病が治らないことははっきりしています。透析患者を増やさないためには、高血圧、糖尿病、腎臓病、この三つの病気にならないことです」
昔から成人病の予防として運動やカロリー制限、飲酒を控えるなどといわれているが、予防策を徹底することが非常に難しいことは患者数の増加が示している。どうすればいいのか。