カップケーキを焼くために初めて業務用の厨房(ちゅうぼう)に足を踏み入れたとき。料理本の執筆を出版社から提案されたとき。「べイクド・バイ・メリッサ」――自分の名前が付いた会社だが、これまでずっと経験豊かな幹部が経営してきた――の取締役会から2019年に最高経営責任者(CEO)への就任を要請されたとき。メリッサ・ベンイシェイさんはそのたびに恐怖を感じていた。CEO就任要請では、財務知識の不足など自分の弱みを考えたが、ノーとは言わなかった。