いまから15年前、米マイクロソフト社のWindows95が発売された当時、ペーパーレス時代が到来し、コピー用紙など紙への需要が激減するのではないか、と製紙業界を震撼させたことがあった。しかし、実際にはその逆で、コピー用紙の生産が追いつかなくて大変だった、という話を製紙業界の役員から聞いたことがある。

 その後、電子認証システムなどが普及し、21世紀になってようやくペーパーレスが定着するのかと思っていたが、そうではないようだ。紙という実物を手に取ってみないことにはわからないことが、いまだに多くある。その典型が新聞だろう。

 筆者は日刊紙の有料サイトを利用しているが、「読む」のは専ら紙のほうである。新聞紙のほうには見出しの強弱があって、内容の重要性を一目で判断でき、一面から社会面までの全体を読むのに10分程度で済むのが長所だからだ。

 インターネットの画面に映し出される記事は、フォント-サイズがどれも同じで、企業業績に関する解説記事と、国会審議や人事異動のベタ記事とが同列に画面表示される。重要な記事を自ら判断してスクロールしていたのでは、朝の忙しい時間帯に10分では到底読み切れない。

 一方、企業の内部で作成されるビジネス文書には内容の強弱がないので、画面を一瞥し、あとは認証キーを入力するだけで終わる。むしろ印刷を禁止して、完全ペーパーレス化している企業のほうが多いだろう。

 そう思っていろいろな企業を訪ねると、職場の片隅にプリンターとシュレッダーが置かれてあることが多く、ルネッサンスの三大発明(活版印刷・羅針盤・火薬)がいまだに命脈を保っている事実を知る。ちなみに、火薬と羅針盤は第2次世界大戦前後に、原子爆弾と軍事衛星に形を変えた。

 活版印刷は20世紀の終わりになってようやく、インターネットに置き換わった。電子書籍が普及し始めれば、歴史の教科書からグーテンベルクの名が消えるのも時間の問題といえるだろう。

低価格プリンターで顧客を囲い
インクで利益を稼ぐ

 そこで今回は、電子化が進んだとはいえ、未だに多くの職場で幅を利かせている“活版印刷の副産物”のカラー-プリンターに注目する。

 都心の家電量販店を訪ねれば多数のメーカーを見比べることができるのであろうが、筆者の住む栃木県小山市では、キヤノン、リコー、エプソン、ブラザーあたりが定番だ。そういえば、ヒューレット-パッカードもあった。

 カラー-プリンターには、有名なビジネス-モデルが確立されている。