「おカネを稼ぎたいだけの人は医学部に来ない方がいい」と言い切る綿田裕孝学部長
学費と偏差値が反比例する私立大医学部。劇的な学費値下げで、東京私大医学部御三家に並んだ順天堂大学。あれから20年、教育の現場はどのように変化したのか、就任したばかりの医学部長に話を伺った。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)
綿田裕孝(わただ・ひろたか)

順天堂大学大学院医学研究科長・医学部長。1965年長崎市生まれ、山口県出身。90年大阪大学医学部卒業、97年同大学院修了。医学博士。同年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校で博士研究員。2001年順天堂大学医学部代謝内分泌学講座講師。助教授、准教授を経て、10年代謝内分泌学講座主任教授、26年4月から現職。
同じような背景を持った集団は弱い
――首都圏にある私立中高一貫の、特に難関女子校に入学した生徒は、実際に受けるか否かは別にして、多くは医学部を志望しているといわれます。実際、特定の中高一貫校に医学部合格者が偏在してしまっている。
綿田 それもどうかと思いますけれど(笑)。
――順天堂大学は、他の大学から見てもかなりの数の高校と連携協定を結んでいます。それはなぜなのでしょう。
綿田 卒業生の多くが医学部に進学する学校だけでなく、さまざまな高校の生徒に、偏差値には表れないような当大学の特徴を知ってもらうことで、順天堂にも興味を持ってほしいと思っています。手間がかかっても、こうした情報共有は大切です。
――ある中堅女子校の高校生が、こちらで手術の様子を見せてもらい、他にもさまざまなメニューがあって、非常に感動して帰っていったという話も聞きました。
綿田 真摯に患者さんの治療に当たっているところを見て、臨床や研究へのモチベーションを抱くような生徒さんに当大学に来てほしいと思います。
――順天堂大学の系属校として、宝仙学園は2025年から理数インター(東京・中野区)で医学進学コースを中1と高1に設けました。その発表の時、“多様性”ということを当時の学長が述べておられた。系属校になる前から順天堂大医学部への進学実績はありましたが、これも偏差値にとらわれず、多様な人材に門戸を開くという一例かと思いました。
綿田 そのコースからはまだ、対象となる卒業生が出ていません。順天堂大としては、最低限の学力は要求しますが、多様な人材に来てほしいと思っています。理数インターのように医学部への内部推薦枠を設ける高校はいまのところ他にはありません。
――日本医科大学は、早稲田大学の系列3校(早稲田大学高等学院、早稲田大学本庄高等学院、早稲田大学系属早稲田実業学校)を対象に各校2人ずつ推薦枠を設けました。一般選抜では得られないような、多様な人材に医師の門戸を開きたい、というのがその眼目だと伺い、実際に効果も上がっているようです。
綿田 同じような背景を持った集団というのは弱いですよね。医師になろうという共通する目標を持ちながらも、ある程度多様な人が集まり、それぞれが互いに影響を受けながら成長していくことは極めて重要だと思います。
私自身の経験をお話ししますと、中学は一応、私学でしたが、地元にある誰でも入れる短期大学付属校で、中学受験の勉強をした記憶は一切ございません(笑)。しかし、独学で受験勉強をして、ラ・サール(鹿児島市)に高校から入りました。
当時、全国各地から集まるラ・サールの生徒は、都会の出身者はその地区の有名な進学塾出身ですが、田舎の出身者は、私もそうですが、進学塾に通わずに入学します。出身地や背景の環境が異なるさまざま人から大変大きな影響を受けました。
――やはり医学部志望が多かったのですか。
綿田 私のいたころはいまほど医学部志望が強かったわけではありません。毎年、自然に4割の生徒が文系に進み、社会貢献を意識して、東京大学に行って官僚になる。政治家になる人もいました。残り6割の理系の半分を少し超えるくらいの人が医学部に行くという感じです。







