被用者向け国保の傷病手当金が
恒久的な制度になることを期待
感染症法上の位置付けの変更に伴い、国保の傷病手当金をはじめとして、コロナ禍で行われていた国の支援策は、順次終了している。だが、COVID-19という疾患が消え去ったわけではない。
5類感染症に移行したCOVID-19は、あらかじめ指定した医療機関から報告を受ける定点把握で感染状況のトレンドが観察されることになった。5月19日に、初めて公表された定点把握では、5月14日までの1週間の1医療機関当たりの平均患者数は2.63人で、4月以降、緩やかな拡大局面にあると報告している。
5類移行によって、COVID-19に感染しても、療養するかどうかは個人の判断に委ねられることになった。だが、無理して働けば、感染を広げることにもなりかねず、何よりも労働者本人の健康が心配される。
そもそも、コロナ禍で国保に加入する被用者に対して、特例的に傷病手当金が支払われることになったのは、本来なら勤務先の健康保険で面倒を見るべき非正規労働者が、都道府県国保に流れてきていることにある。
現在、国は社会保険の適用拡大を進めており、2022年10月から従業員数101人以上の企業でも、短時間労働者に社会保険が適用されるようになった。さらに、2024年10月には従業員51人以上の企業にも拡大される予定だ。
だが、それでも、被用者保険の適用を受けられない非正規雇用の労働者が、約60万人残ると試算されており、労働者間での給付格差が完全に解消されることはない。
COVID-19に限らず、病気やケガをして仕事を休まざるを得なくなる可能性は、正規雇用だろうが、非正規雇用だろうが、誰にでも起こり得ることだ。だが、社会保険に加入できない労働者は、傷病手当金の給付がないため、休業と同時に生活の糧を失うことになる。
すべての労働者を社会保険に加入させることができないのなら、これを機会に、国の財政支援を恒久化し、国保に加入する被用者に対する傷病手当金の給付を継続するべきではないだろうか。コロナ禍で構築した仕組みを利用すれば、通常の病気やケガによる休業にも対応できるはずだ。コロナ禍であぶり出された国保加入の被用者の問題を解決するために、今後の制度改正に期待したい。