今年3月13日、屋内でもマスクの着用が個人の判断に委ねられ、5月8日には新型コロナウイルスの感染法上の分類が5類に引き下がった。少しずつパンデミック前の日常に戻ってきつつあるが、マスクを外し、対面で会う機会が増えてくると、自分の“ニオイ”が気になる人もいるだろう。アフターコロナ社会を迎えるにあたって気にすべき、自分自身のニオイの気付き方やケアの方法を、臭気判定士で、体臭に関する研究、体臭評価サービスの提供を行うオドレート代表の石田翔太氏に聞いた。(清談社 鶉野珠子)
日常的なマスク着用で
多くの人の嗅覚が低下
感染が拡大した2020年春から今まで、有効的な感染対策として多くの人々が着用していたマスク。3年近くマスクの着用が日常的になっていたが、マスクの有無で“ニオイ”の感じ方に差が生じるものなのだろうか。
「多かれ少なかれあるはずです。質の面では、自分の口臭がマスク内に滞留することで、別のニオイが混じっているように感じます。量の面では、マスクの種類によってどれくらいのニオイ分子を通さないかが変わるので判断は難しいですが、物理的に防御できている部分もあると思います。ゆえに、質と量の両方が影響し合い、『マスクを着けていたことで周りのニオイを感じにくくなっていた』と言えるでしょう」(石田氏、以下同)
マスクで感度が下がっていた人々の嗅覚は、脱マスクにより本来の敏感さに戻っていくと考えられる。そうなると心配なのが、自身のニオイだ。大前提として人は誰しも体臭を放っているが、ミドル世代ともなれば、その体臭が加齢臭やミドル脂臭といった「人を不快にさせる悪臭」に変わっていることもあり得る。しかもこうした体臭は、自分では気付きにくいので厄介だ。
「よく企業から『職場にクサい人がいるのですが、どう対応したらいいでしょう』という相談を受けますが、こうした相談を持ってくる人がいる一方で『同僚から体臭を指摘されて気まずい』という悩みを抱えている人もいます。正解となる対処法がないうえ、指摘する側もされる側も、かなりストレスを感じる問題です。そのため、自身のニオイに自身で気付き、ケアをしていくことが重要になってきます」
石田氏がこれまで相談を受けてきた人のなかには、よりショックを受けるケースもあったという。
「ニオイに無頓着な人や気付いていないフリをしている人もいますが、多くの人は自分自身の体臭について『クサいかも』と思っています。自覚のある人が改善のためにあれこれ頑張っている段階で『クサいですよ』と指摘されるのは、とてもショックが大きい。そうしたやり取りがきっかけで会社に行きづらくなった人もいるほどです。ニオイについての指摘は、思ったよりもデリケートな問題なのです」