ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は5月20日、制圧したウクライナ東部の都市バフムトの廃虚に立ち、敵視する人物をやり玉に挙げて怒りをぶちまけていた。名指しされたのはロシアのセルゲイ・ショイグ国防相とロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長だ。プリゴジン氏は多大な犠牲を伴ったバフムトでの勝利を宣言する中で、「ショイグとゲラシモフは戦争を個人的な娯楽に変えた」と糾弾した。「その気まぐれのせいで、想定される水準の5倍もの戦闘員を失った。彼らは自らの行為の責任を問われるべきだ。ロシアではこれを犯罪と呼ぶ」ワグネルとロシア軍幹部の対立激化は、1年余り前のウクライナ侵攻開始以降初めて、ロシアの権力組織内の秩序に生じた大きな亀裂を露呈させた。双方の対立は、シリア内戦に端を発する裏切りの物語とも言える。