新型コロナウイルス禍が落ち着き始め、企業業績への影響も緩和されてきた。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった難題がいまだに日本企業を苦しめている。その状況下でも、企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は丸井グループ、J. フロント リテイリング、三越伊勢丹ホールディングス、エイチ・ツー・オー・リテイリングの「百貨店」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
三越伊勢丹HDが2桁増収
通期の営業利益は前年の5倍に
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の百貨店業界4社。対象期間は2022年11月~23年3月の直近四半期(J. フロント リテイリングは22年12月~23年2月期、その他3社は23年1~3月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・丸井グループ
増収率:5.4%(四半期の売上収益557億円)
・三越伊勢丹ホールディングス
増収率:15.9%(四半期の売上高1202億円)
・J. フロント リテイリング(大丸松坂屋、パルコ)
増収率:9.3%(四半期の売上収益1027億円)
・エイチ・ツー・オー・リテイリング(阪急阪神百貨店)
増収率:4.1%(四半期の売上高1532億円)
※高島屋は会計方針の変更に伴い、前年同期比増収率が非開示のため、掲載を見送った。
新型コロナウイルス感染拡大によって大打撃を受けてきた百貨店業界の4社だが、いずれも四半期増収率がプラスとなった。
中でも、三越伊勢丹ホールディングスは15%超の大幅増収を成し遂げた。コロナ禍に伴う大減収からの反動増の影響には注意が必要だが、復活の兆しが見え始めている。
また同社は、通期累計の営業利益が前期から約5倍、最終利益が約2.6倍と大きく伸びた。通期累計の売上高も2桁増収だった。
さらに、伊勢丹新宿本店の通期累計売上高は3000億円を突破し、三越と伊勢丹が経営統合して以降で最高を記録した。この水準は「バブル真っ只中の数字」を超えたという。
だが、三越伊勢丹ホールディングスの業績を細かく見ていくと、同社がまだコロナショックからの「完全復活」を果たしたとはいえないことが分かる。
次ページ以降では、各社の増収率の推移を紹介するとともに、三越伊勢丹ホールディングスの現状について詳しく解説する。