中国に土下座せんばかりの
共同声明は「外交的敗北」

 安倍外交の全てが成功していたとは思えないが、少なくとも世界中の国々が(ドナルド・トランプ前米大統領につながりたいという動機があったにせよ)日本に助けを求めてきた時代から大きく後退しているのは疑いようもない事実だ。

 岸田外交には、自主性がまるでない。空気だけ読んで片方につくだけでは、誰からも相手にされなくなってしまう。特にフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、中国との関係改善に意欲的で、4月の訪中時に欧米メディアが行ったインタビューに対して、以下のような発言をし、波紋を呼んだ。

「欧州は台湾問題に関して米中対立に巻き込まれてはならず、戦略的自律性を維持しなければならない」「われわれ欧州は台湾問題に関し、米国に追随したり中国の過剰反応に巻き込まれたりしてはならない」「われわれの危機でないものに関わることは欧州に対して仕掛けられたワナであり、それにはまることがあってはならない」「欧州は戦略的自律性を高めなければならない」

 私は、中国がウクライナの仲裁に入るのは妨害せよ、などと言っているわけではない。勝手にやらせておけばいいし、そもそもこれまでのところ、まともに中国が本腰を入れてロシアのウラジーミル・プーチン大統領やゼレンスキー大統領を説得しているようには思えない。そんな状況で、日本まで中国に頼る意味はない、ということだ。

 岸田首相は日本が独自外交などできないと達観して考えているかもしれないが、例えば、G20の議長国であるインドのナレンドラ・モディ首相と、G7の議長国である日本が、連携して仲裁に入るのは可能だろう。ロシアにとってみれば、天然ガスを買ってくれるインドを無視することはできないし、G7の中で日本はかつての安倍外交のように独自外交を展開してくれるのではないかという期待が大きいはずだ。

 いずれにしろ、世界が中国に土下座せんばかりの声明を日本がまとめるというのは、外交的敗北以外の何物でもない。ウクライナ戦争が始まって、日本は西側諸国に追随するだけの外交となった。追随するだけなのだから失敗もないが、日本のプレゼンスは、各国へする莫大な援助額と反比例するように落ちていく。