ロシア政府に抗議した市民はどんな運命を辿るのか。クレムリン前で「プーチンは殺人者だ」と書かれた紙を掲げて自宅軟禁された女性に増田ユリヤ氏が直撃。ジャーナリストの池上彰氏と語った。(ジャーナリスト 池上 彰、増田ユリヤ 構成/梶原麻衣子)
「プーチンは殺人者だ」と書かれた紙を
クレムリン前で掲げて自宅軟禁
池上 広島で行われたG7サミットの場にウクライナのゼレンスキー大統領が参加するなど、いわゆる西側社会によるロシアへの圧力が強まっています。これがロシア社会にどのような影響を及ぼすか、注目ですね。
増田 公には口にできずとも、侵攻当初から反対しているロシア国民も少なくありません。
池上 ロシアによるウクライナ侵攻開始直後には、反戦運動が盛んに行われていました。2022年3月には、ロシアの国営放送局の生放送中に「NO WAR」と反戦メッセージを掲げた女性がいましたよね。
増田 番組編集員だったマリーナ・オフシャンニコワさんですね。彼女は23年の初めにフランスへ亡命しており、私は4月末にフランスで彼女を取材しました。
池上 オフシャンニコワさんの行動はものすごく勇気の要るものでしたが、ロシアを脱出するのも命懸けだったでしょうね。取材ではどんな話が出ましたか。
増田 生放送中の抗議は「賭けだった」と言っていました。スタジオに入れないかもしれないし、入ってもプラカードが映った瞬間に、カメラを止められてしまうかもしれない。しかし彼女を制止する人はいなかったので、「スタッフにも同じような思いがあったのではないか」と話してくれました。
池上 政権寄りの報道を行う国営放送での出来事ですから、世界的なインパクトも大きかったですね。
増田 オフシャンニコワさんの生放送中の抗議行動は罰金刑で済んだのですが、その後もクレムリン前で「プーチンは殺人者だ」などと書かれた紙を掲げる動画を公開していました。これが「虚偽情報を拡散させた」と見なされてロシア当局に起訴され、自宅で軟禁。裁判を待つ身となっていたのです。