2024年の米選挙、AI捏造動画が多数使われる恐れPhoto:Patricia Marroquin/gettyimages

 ジョー・バイデン米大統領が再選を果たした後、中国が台湾に侵攻し、移民がメキシコとの国境を越えて米国に押し寄せている様子が映し出される動画がある。また、ドナルド・トランプ前大統領が制服姿の警官らに徒歩で追跡され、逮捕される一連の映像も存在する。さらに、米国防総省で爆発が起き、同省が炎に包まれる様子をとらえた写真もある。

 こうしたシーンの共通点は、すべてが偽物だということだ。急速に進化する人工知能(AI)により、視聴者をだまし、誤った情報を拡散する可能性のある洗練された動画や画像の生成が容易になりつつある。このため、2024年の大統領選挙と連邦議会選挙に向けた政治キャンペーンは、大きな脅威に直面している。

 選挙運動で偽の動画や画像が登場するのは目新しいことではない。トランプ氏は2020年の大統領選で、バイデン氏が繰り返し舌を突き出す様子を描いた偽のアニメに「だらしないジョー(Sloppy Joe)」というキャプションを付けて公開した。2019年には、当時のナンシー・ペロシ下院議長が、ろれつが回らない状態で話しているかのように見せるため人為的に再生速度を落とした映像が何百万回も再生された。