テレワークの実施において必ずといっていいほど上がる「コミュニケーションが取りにくい」という課題。とりわけテレワークと出社の勤務形態が混在する組織においては、置かれた環境によって隔たりが生じたり、業務のやりやすさに格差が出る懸念もある。第一人者として30年近くテレワークを推奨してきた田澤由利氏の著書『テレワーク本質論 企業・働く人・社会が幸せであり続ける「日本型テレワーク」のあり方』(幻冬舎メディアコンサルティング)では、各組織に合ったデジタルツールを導入しコミュニケーションを図ることの大切さを説いている。デジタルツールを用いたコミュニケーションの具体例について、本書より一部抜粋・編集して紹介する。
円滑なチーム業務には
報・連・相のデジタル化が必須
テレワークのコミュニケーションをより対面でのコミュニケーションに近づけるための重要な要素として、以下の5つが挙げられます。
・リアルタイムの対話:いかに、リアルに近づけるか
・話しかけるきっかけ=いかに、声を掛けやすくするか
・チームの業務進行=いかに、確実にやりとりするか
・インフォーマルな会話=いかに、自然に共有するか
・チームの一体感=いかに、一体感を醸成するか
なかでも、「チームの業務進行」は、テレワークにおいて生産性を向上させる重要なポイントです。それにもかかわらず、コロナ禍では、ウェブ会議ツールやチャットツールに注目が集まり、多くの企業がチーム内のコミュニケーションのデジタル化まで取り組んでいなかったのではないでしょうか。
このことが、感染者の数が減ると出社する社員が増える現象につながっていると思います。実際に「チームの業務進行」をオンラインでできるようにした企業は、出社に戻らず、テレワークをさらに推し進めています。
ここでは、チーム業務のコミュニケーションの基本である「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」のデジタル化のポイントと事例をご紹介します。
「報告・連絡・相談」を指す「ホウレンソウ」は、「組織の血液」に例えられるほど、ビジネスにおいて重要な要素です。テレワークによる生産性向上を目指すのであれば、「ホウレンウ」のデジタル化は、避けて通ることはできません。
それでは、ホウレンソウとは具体的にどういう内容かを確認しましょう。
【報告】業務の進捗/成果(アウトプット)の報告
上司からの業務指示に対して、その業務の進行状況や、結果を報告することです。トラブルが発生したときはもちろん、順調に進めているときでも、こまめに報告することが重要です。
【連絡】情報の共有/確実な伝達
業務に関する情報を関係者に伝えることです。上司や同僚への発信はもちろん、ほかの部署からの連絡もあります。確実に伝達することが重要です。
【相談】業務の課題/勤務上の課題
仕事を進めるうえで、判断に迷うときや意見を聞いてもらいたいときに、上司や先輩、同僚に意見を聞き、アドバイスをもらうための相談です。早めに相談することが大事です。
これらのホウレンソウは、これまで主に上司と部下間でのコミュニケーションとされていました。しかし、チームで業務を進めるうえでは、チームメンバー全員がホウレンソウを共有することで、よりスムーズにより確実に業務を進めることができます。しかしこれまでは、ホウレンソウの多くが口頭で実施されてきたので、共有自体が難しかったのかもしれません。