日本の専業エンジニアリング会社は、産油国・産ガス国政府などを相手に仕事をしてきたが、国内での認知度は低かった。皮肉にも最大手の日揮がアルジェリアで内戦に巻き込まれて注目が集まった。日本企業のグローバル化が進む中で、一足早く海外に軸足を移した千代田化工建設の久保田社長に実情を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)
――アルジェリアで起きたイスラム武装勢力による人質事件で、競合相手であり、時には協業相手でもある日揮は多数の犠牲者を出した。
1946年、茨城県生まれ。69年、東北大学工学部を卒業後、千代田化工建設に入社。豪亜プロジェクト総室長、海外プロジェクト総本部長などを歴任、2001年に海外プロジェクト統括兼海外営業本部長に就任。常務取締役兼技術統括を経て、07年に社長に就任。11年からは、エンジニアリング協会の理事長を兼務。持論は「人間洞察力を上げるには、古今東西の古典を読むべし」。13年、会長に就任予定。
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大変、痛ましい結末だった。
同じく、海外で石油・天然ガスの生産設備の建設プロジェクトを請け負うビジネスをする身として、今回の事件の発生にはショックを受けた。まったく人ごととは思えないし、ご家族や関係者の方々の衝撃や悲しみを思うと、こみ上げる怒りとともに胸が痛み、言葉もない。改めて、犠牲者の方々には深く哀悼の意を表したい。
――今回の事件は、アフリカ最大の軍事力を持つアルジェリアで、国防軍の庇護下で起きた。同国は、テロリストとは取引しない強硬な姿勢を貫くことでも知られる。
現在、私たちもアルジェリアの北東部でLNG(液化天然ガス)関連設備の建設をイタリアの会社と一緒に手掛けており、日本から2人派遣している。事件の発生直後、すぐに現地のセキュリティの状況を再確認した。そして、現地での安全が確保されていると判断できたので、プロジェクトは続いている。
1962年にフランスから独立したアルジェリアは、長らく内戦状態にあり、政情が安定しなかった。そして、2010年~11年に盛り上がった「アラブの春」(民主化要求の波)も、同国だけは素通りした。
誤解が多いので、強調したい。私たちは、好んで危険な国に社員を派遣しているのではない。そもそもリスクというものは、世界のどの国にも存在するが、それらの管理が可能だと考えるからこそ、途上国などの海外で働いている。