先を読み過ぎず「今」に集中

わび:私は“今”に集中することも大事にしています。私の悪い癖のひとつとして、先のことを心配したり、過去のことを振り返ってくよくよ後悔したりすることがあります。そうするとメンタルがどんどん疲れていくんですね。

 対策として、思考を“今”に戻すようにしています。心配や後悔を断ち切って心に平穏を取り戻せるからです。私の場合は、筋トレや神社やお寺のお参り、ハーゲンダッツを食べることが思考を“今”に戻すスイッチです。

下園:自衛隊でも、そういう考え方はありますよね。戦場では、いつ何が起こるかわかりません。だから、不安に駆られて先の先まで読んでいくと、戦いの前に疲れ切ってしまいます。そこで“読まない”訓練をします。大きな計画ほど、当初だけを詰め、後はざっくりとした案にとどめておくのです。後半部分は、その時になって考えればいい、“今”に集中するというわびさんの考え方に近いですね。

わび:そのとおりですね。

下園:強大な敵が目の前にいるとき、正面から挑むことを自衛隊では「突破」と言います。一方で、正面の敵と戦わず、その後方に回り込み、戦わないで勝利する方法を「迂回」と言います。戦術セオリーとしては後者が圧倒的に有効とされているんです。

 わびさんも、自衛隊生活では「突破」を繰り返して消耗してうつになってしまいましたが、その過程で得られた考え方も多いと思います。その結果、目の前の自衛隊という課題から離れることになったのですが、これは迂回しているものと考えることができます。戦術のセオリー通り、最も有効なルートを進み始めているのです。今、わびさんは重要な目標に向かって邁進しているなとお見受けしました。

わび:ありがとうございます。おかげさまで、現在携わっている仕事は大変なのですが、消耗せずに取り組むことができています。もし、これを読んでいる方のなかで心が弱っている方がいたら、「我の健在」を意識して、仕事への向き合い方を見直してみてはどうでしょうか。

 そして疲れたときは、下園先生が仰る「おうち入院」も実践しています。病院に入院したつもりで、例えば週末の2日間、とにかくごろごろと寝るようにする。家族の理解が欠かせませんが、これでもかなり回復します。