6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利据え置きが決定された。景気後退を避けたいとみられるパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の姿勢はインフレ抑制の失敗をもたらしかねない。(みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部プリンシパル 小野 亮)
6月のFOMCで11会合ぶりに
据え置かれた政策金利
6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)は事前に想定されていたよりもタカ派のメッセージを発したと受け止められた。政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの11会合ぶりの据え置きが決定されたものの、参加メンバーによる政策金利見通しが前回3月と比べて大きく上方修正されたためだ。
政策金利見通しの中央値は、2023年末が5.6%、2024年末が4.6%、2025年末が3.4%となり、3月と比べるとそれぞれ0.5%ポイント、0.3%ポイント、0.3%ポイントずつ引き上げられた。
24年末や25年末の政策金利は、その時点での経済状況に極めて高い不確実性があるという意味で「アテにならない」が、23年末の政策金利見通しは相対的に現実味が高い。
より詳細に政策金利見通しの分布を見ると、年内据え置き派は2人にとどまり、利下げ派は消えた。これに対し0.25%の利上げ派が4人、0.5%が9人、0.75%が2人、1%が1人と、利上げ派が多数を占め、特に0.5%の追加利上げ派が全体の半数を占めるようになった。
政策金利見通しが引き上げられた背景には、米国経済に関するFOMC参加者らの評価の変化がある。
次ページ以降、参加者の米国経済に対する見通しの変化を検証するとともに、インフレ抑制の成否について分析する。