パウエルFRB議長は利上げ停止の可能性は示唆したものの、利下げは否定する。市場は、年内の利上げを織り込んでいるパウエルFRB議長は利上げ停止の可能性は示唆したものの、利下げは否定する。市場は、年内の利上げを織り込んでいる Photo:EPA=JIJI

米国のインフレの終息は見通せず、FRBも金融引き締めの手綱を緩める気はない。しかし、市場は年内2回の利下げを織り込む。その想定が裏切られたとき、待つのは株価下落、金利上昇のしっぺ返しだ。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

利下げに転じるような
経済情勢になる公算は小さい

 市場とFRB(米連邦準備制度理事会)の政策金利動向に対する認識のズレが埋まらない。市場は「年内に2回の利下げ」を織り込んでいるが、FRBは現時点では、利下げに動くことを否定している。

 下図は政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの先物の動向から、FOMC(米連邦公開市場委員会)開催時ごとにおけるFFレートの誘導目標変更の確率を算出しているFedWatchに基づいて、年内のFOMC開催時における市場の想定FFレート(中央値)を示したものだ。

 現在、FFレートは5~5.25%(中央値5.125%)。2023年12月のFOMC時の市場想定レートは、約4.46%。その差は0.6%強。通常のFFレートの変更幅0.25%から判断すれば、市場は最低でも12月までに2回利下げをすると見込んでいる。

 一方、米シリコンバレー銀行(SVB)破綻後の3月23日のFOMC後の記者会見で、パウエルFRB議長は年内の利下げを否定した。また、その時点で示された、FOMC参加者の23年末のFFレートの水準予想の中央値は現状と同じ5.125%と利下げを想定していないという結果だった。

 0.25%の追加利上げを決定した5月のFOMCの声明では、さらなる利上げを示唆する文言は削除され、利上げ打ち止めの可能性は示されたものの、パウエル議長は会見で「インフレ率が早く下がるという見解は持っていない。そうした状況下で利下げに転じることはない」と発言した。

 今後の経済情勢次第では、FRBが利下げに転じる可能性はある。しかし、インフレ率が早期に低下し、利下げに転じるような経済情勢になる公算は小さい。