中国では5人に1人が大学を卒業しても職がないという大失業時代が到来している。この前代未聞の就職難を避けるようにして、日本に上陸しようとする中国人留学生たちがいる。「卒業後は日本企業に就職したい」と切望する中国人留学生だが、そこでも艱難辛苦が待ち受けていた。(ジャーナリスト 姫田小夏)
中国の就職難を回避し、日本に上陸したものの…
コロナ禍の3年間は中国の若者にとって激動の3年間だった。時々刻々と進行するコロナ感染のリスク、米中対立の先鋭化と目まぐるしく変化する国際情勢、習近平政権下のゼロコロナ政策とこれがもたらす大失業時代――。自分たちではどうすることもできない運命にもてあそばれてきたのが、今の中国の学生たちだといえる。
2022年、日本に滞在する中国人留学生は12万5940人(数字は出入国在留管理庁)で、前年比30.4%増となった。日本に在留する外国人留学生は30万638人、コロナで落ち込んだものの、2019年の34万人の水準に戻しつつある。その中でも中国人留学生は外国人留学生全体の4割強を占める存在だ。現在、日本に滞在する中国人留学生の中には、中国に明るい未来を描けず逃避してきた者もいる。
彼らの日本語を習得する能力はすさまじく、わずか3カ月で、ある程度の日本語を話せるようになる。「独学で日本語能力試験のN1(最上級レベル)を取得した」「アニメを見て日本語を覚えた」といった人材はゴロゴロいる。彼らは子どもの頃から「暗記型の教育」を受けていることもあり、日本語のフレーズの暗記も苦にならないようだ。日本で1年も生活すれば、“立派な日本語スピーカー”になる学生は少なくない。
中国の就職難を回避し、日本に上陸した彼らの中には東大、早稲田、慶応の学位取得を目指す、いわゆる“優秀な中国人留学生”もいる。その高い日本語能力とともに引く手あまたの就職活動を展開中なのかと思いきや、どうも彼らの顔色はさえない。
その厳しい表情からは、過酷な就職戦線であることが見て取れる。一体、何が起こっているのだろうか。