2012年4月にソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶事業を統合させて生まれた専業メーカーは、厳しい液晶産業で成長を描けるか。

ジャパンディスプレイ社長 大塚周一<br />売上高1兆円と上場に向けて<br />大型、高精細化の“風”に乗るPhoto by Kazutoshi Sumitomo

──親会社から切り離された合計4500億円に上る中小型液晶の事業の、どこにビジネス上の優位性があると実感しているか。

 そもそも価格の安いローエンドの液晶ディスプレイは捨てている。そこで韓国や台湾のメーカーと真っ向勝負はしない。

 今、スマートフォンやタブレット型端末のメーカーが求めているものはシンプル。それは液晶画面の大型化と高精細化だ。

 われわれのコアには高精細なLTPS(低温ポリシリコン)という液晶パネルがある。これは難しい技術だが、ここに徹底的に特化して差別化を図っている。

 統合前のソニーが育てた「ピクセルアイ」というタッチパネル内蔵ディスプレイや、日立製作所が得意な「IPS」という広視野角の技術など、日本メーカーの尖った技術の強みを再確認している。

 これがお客さんであるメーカーにとって大きな付加価値になっている。

──今年夏までには、茂原工場(千葉)が新たに稼働する。

 6月から量産をスタートさせたい。現時点で多くの受注があり、数字上はそれだけで生産能力がいっぱいになるほどだ。

 昨年の能美工場(石川)、そして茂原工場と二つの新工場を立ち上げることで、ジャパンディスプレイは設立時の2倍の生産能力を抱えることになった。

 15年の売上高目標もそれに伴って、2倍の1兆円を狙うのは自然なことだ。