ChatGPTをはじめとする生成AIは、国際政治にも重大な影響を及ぼす。そこで本稿では、元外交官の筆者が、プラス面とマイナス面の両方を考える。世界の分断を扇動するフェイク画像・動画の危険性とは?(著述家/国際公共政策博士 山中俊之)
映画「M3GAN/ミーガン」を見て納得
少女がはまった「AI依存症」の危険
米国で大ヒットして日本でも上映が始まった映画「M3GAN/ミーガン」。事故で両親を失った少女が、どんどん賢くなるAI(人工知能)ロボットのミーガンに心を寄せ、やがてミーガンなしでは生活が困難になる「依存症」にも近い状態になる姿が描かれている。AIは便利である一方、人間の判断力をまひさせる可能性も秘めていることを示唆する映画だ。
最近もっぱら話題のChatGPT(生成AI)は、わずか2カ月で1億人もの利用者を獲得したという。生成AIとは、与えられた入力データから新しいデータを生成するAIを指す。生成AIは、もともと英語で「Generative AI」であり、Generativeを直訳すれば「新しい生命や子孫を生み出すさま」である。
ChatGPTを運営するOpenAIは、イーロン・マスク氏など米国の起業家や投資家が集まって、2015年に設立された非営利団体だ(なお、営利企業を子会社として有している)。その後、マスク氏は出資を引き上げ役員からも退いた。代わって今はマイクロソフトが出資を増やしている。
ビジネスや教育の現場では、ChatGPTをいかに活用するか、あるいは規制を加えるのか、議論が噴出している。ChatGPT活用はメリットもある半面、大きな攪乱要因にもなり得る。
そして実は、国際政治にも重大な影響を及ぼす可能性がある。そこで本稿では、国際政治への影響についてプラス面とマイナス面の両方を考える。