組織内のコミュニケーションレベルが低下したと感じるリーダーが増えている。その原因のもとになる一つに、匿名性を確保しようとする過剰な意識がある。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)
コミュニケーション低下をもたらす
匿名性の怖さ
「メンバー同士の関係性が希薄になった」「対話をしても、相手が理解しているのか、していないのか、わかりにくくなった」「チームワークが築けていないように思う」…こうした相談を受けることが、リモートワークが定着するにつれて多くなった。
このように申し上げると、「在宅勤務なのだから、コミュニケーションができなくなるのは、当たり前だ」「対面での対話がめっきり少なくなったのだから、理解度が下がるのはやむを得ない」「個の時代なので、チームの結束力が低下しても、仕方がない」という意見に接する。
しかし、私にはリモートワークを理由にして、チームのコミュニケーションレベル、組織のエンゲージメントレベルを高めることを諦めて、放棄してしまっている状況だというように思えてならない。このまま放置していると、思った以上にコミュニケーションやエンゲージメントのレベルが低下して、回復不能な状況になりかねない。
今日のリモートワークの状況でも、コミュニケーションやエンゲージメントのレベルの低下を防ぎ、向上させることができる方法がないだろうか。
コミュニケーションやエンゲージメントのレベルを高めるためには、相手の特性を見極める手法、相手の好む話法を発揮する手法、相手と自分の優先順位の基準を一致させる手法など、さまざま方法が役立つ。
しかし、あれもこれも、一度に実施しようとしても効果が出にくい。そこで、コミュニケーションやエンゲージメントの低下をもたらしてしまう元になる要素を見極めて、その要素がもたらす弊害を解消すれば、短期間で解消しやすくなる。
その「元になる要素」とは、リモートワークがもたらしている、「ビジネスにおける匿名性の流布」だ。実は、匿名性の過度な追求こそが、組織を弱体化させてしまう原因だ。