給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

【成長株の見つけかた】棚卸資産の動きで、会社の危ない兆候をチェックするPhoto: Adobe Stock

営業循環の中で生じる資産に注目

 ここまで見た項目の中で、現金・預金、受取手形・売掛金、棚卸資産は営業循環の中で回っている資産であり、本業の状況を知るのに重要な項目です。

 営業循環というのは、下図のように、本業における資産の動きのことです。

 仕入れや製造を行うと現金・預金が減って棚卸資産が増え、その棚卸資産を販売すると、棚卸資産が減って、受取手形・売掛金が増えます。最後に、代金を回収すると、受取手形・売掛金が減って、現金・預金が増えます。

 受取手形・売掛金を経ずに、販売すると同時に現金・預金が増えるケースももちろんありますが、上図の循環を基本形として理解してください。この営業循環が順調にグルグル回転しながら現金・預金が増える形が理想的です。

棚卸資産の増加が目立つ時には、要注意

 受取手形・売掛金や棚卸資産の増加が目立つ時には要注意です。

 売上高が増えれば受取手形・売掛金や棚卸資産も増えますが、売上高が1.5倍にしかなっていないのに、受取手形・売掛金や棚卸資産が2倍とか、3倍になっていたら何か異常が発生している可能性があります。

 受取手形・売掛金が、売上高の増加率を超えて異常に膨らむケースは特に注意です。こうした場合には、大きな取引先の支払い状況に異常が出ていないか確認したいところです。

 棚卸資産の増加に関しては、意図した在庫増加なのか、意図しない在庫増加なのかによって判断は分かれます。

 新製品の発売に向けて意図的に在庫を増やしているケースもあります。こうした場合には、棚卸資産の増加をポジティブに捉えることもできます。

 しかし、そうした狙いが特にあるわけでもなく、想定よりも売上高が上がっていないために棚卸資産が積み上がっているのだとしたら要注意です。

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/