給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。
株の最大の魅力は、成長性
株式投資をする上でいちばん重要なのは、①成長性のある株を見極めて、②割安な値段で買う、ということです。成長性と割安さが投資家の求めるべき2大テーマであり、投資家が常に意識するべきポイントです。順を追って説明します。まずは成長性についてです。
成長性は、株の最大の特徴であり魅力です。
経営者や従業員が日々努力して会社が成長すると、会社の業績が伸びて経営者や従業員の報酬が上がるわけですが、株主に支払われる配当も上がり、株価も上がります。このように、成長しようとする人たちの意思や能力が投資成果に反映される点が、他の金融商品にはない株式投資の大きな魅力です。
特に、上場企業の経営者は、普通の人に比べて並外れた能力と成長への情熱がある人が多いです。私たち投資家としては、そうした会社の株を持つだけで、そうした会社の成長の成果を分けてもらうことができます。その代表的な事例として以下の図にディスカウントストアのドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(略称:PPIH、証券コード7532)の事例を挙げました。
PPIHは、上場してから25年間で売上高を120倍、純利益(税金を支払って最終的に残った利益)を150倍と業績を大きく拡大し、株価は120倍になりました。
大きく伸びた成長株は、こんなにある!
次の図には、PPIHを含めた成長株の事例を挙げました。おなじみの店、おなじみのサービス、おなじみの経営者の会社の株が何十倍、何百倍になっています。もちろん、これほど上昇する例は上場企業の中でも一握りです。
しかし、これほどではないとしても5倍、10倍になる株は数多く出現しますし、そのような大きな可能性を秘めていることが株の最大の魅力です。
もちろん、株にはリスクがあります。
「買った株が何割も下落してしまった……」ということもよくあることです。
しかし、10万円投資したものが何十万円とか何百万円になる可能性に比べると、数万円程度損するリスクは、それほど大きなものとはいえません。リスクとリターンを天秤にかけてみれば、株はかなり有利な金融商品であることがわかると思います。
そして、大きく成長する株は、私たちの身の回りに結構多く出現します。上の図に挙げた成長株の事例は、いずれも、
・魅力的な商品・サービス
・他が真似できない事業の仕組み
・強力なリーダー
など、個人投資家にとっても、わかりやすい強みをもった会社ばかりです。
特に、ユニクロ(ファーストリテイリング:9983)、ドン・キホーテ、すき家(ゼンショーホールディングス:7550)、業務スーパーの神戸物産(3038)、メガネブランドのJINS(ジンズホールディングス:3046)、100円ショップのセリア(2782)、ワークマン(7564)などの小売・飲食チェーンは、店舗や客が増えている様子がわかりやすく、消費者の立場でもその店の魅力や成長の勢いなどを確認しやすいです。
ZOZO(3092)は、インターネット上のファッションモール、MonotaRO(モノタロウ:3064)は工場や工事で使う工具や資材のネット販売などの仕組みを作り、その便利さによって利用者たちから絶大な支持を得て大きく成長しました。
また、ファーストリテイリングの柳井社長、日本電産の永守会長、ソフトバンクグループの孫社長、サイバーエージェントの藤田社長は卓越した経営手腕と猛烈な成長志向を持ち、個人投資家にも会社のビジョンや成長戦略をわかりやすく語っています。
成長株を探す注目分野は、これ!
以上のように、私たちの身の回りには成長株を探すための情報がたくさん転がっています。買い物、飲食だけでなく、スマホ、ゲーム、おもちゃ、旅行、パチンコ、ペット、不動産、健康・美容、介護・保育、住宅、金融など、私たちの生活に関するあらゆる分野でさまざまな企業が日々努力し、便利で新しい製品やサービスが生み出されています。
日常生活や仕事を振り返って、何か伸び盛りの会社がないでしょうか。以下の図に成長株を探すヒントとなる注目分野の一覧を入れました。成長株を探すことを生活習慣の1つにしてみてください。
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/