コツコツと業績を伸ばしてきた経営者が直面する「売上の壁」
特に、年間の売上高が2億円から3億円のレベルに達すると、そこでピタッと成長が止まってしまう経営者が多いという。
そんなときに参考になるのが、【発売から18年、2万人以上の経営者に支持されるバイブル】として、待望の新装版が発売された『新装版 売上2億円の会社を10億円にする方法』だ。
本稿では、上場経験のある経営者から熱烈な推薦を受けている本書の中から、経営の基礎である「設計図」思考の一部を紹介する。

経営者が「社員に任せて育成する」のを今すぐやめるべき理由(後編)Photo: Adobe Stock

能力のある社長にしかできない重要な仕事

 前回、社長の役割は「工場長=工場設計者 兼 工場運営責任者」だとお伝えしました。

 まず考えなければならないのは、作業フローそのものです。職人は無意識的に作業の段取りを決めて仕事を進めていきますが、そんなブラックボックスに入っている職人技を明るいところに取り出してきて、誰もができるようなやり方や流れに組み立て直すことから始まります。
 あるクライアントの経営者は「自分が営業として現場でやっていたことを全部細かく書き出してみて、その流れを分解して社員でもできるような作業単位に括り直していった」と語っています。

 さらにはどういう作業フローにしたら間違いがなく、速く、そして楽になるのか、を考える。自分でラインに向かって作業することではありません。「戦闘」するのはあくまでも社員です。

 同時に「工場長」である社長には、自社工場でつくっている製品の出荷量、品質に対する責任があります。品質チェックの工程を新たにつくる必要があるかも知れません。
 あるいは工場の生産能力に見合うような注文も必要です。注文が少なすぎてつくるものがなく、余剰能力が出るようでは困りますし、逆に注文が多すぎてこなせないようでもいけない。

 メーカーだけではなくいろんな業種の企業がトヨタ自動車の「カイゼン」に学ぼうとしています。「分業する」という考え方は、特にモノをつくるメーカーに限られたことではなく、どんな商材をつくる業界でもまったく当てはまりますし、マーケティング企画やSaaSなど、いわゆるサービスを提供するような会社でも同じことが言えます。

 仕事をすることではなく、仕事は何かを考える、すなわち作業そのものをどうするかを考えるには経験がものを言いますし、アイデアも必要です。能力が高くないととてもじゃないですが、社員にはできない。つまり、必然的にこれは社長にしかやり遂げられない仕事なのです。

 会社を大きくしていくにあたっては、社員数を増やしていく必要がある。しかし肝心な社員の能力は自分の30%しか期待できない。そんな環境の中で、これまでと同じような、あるいはそれ以上のクオリティをキープしたい。
 このままでは、社長が1人で現場を切り盛りするだけでは到底追いつかない事態がすぐにでも発生することが脳裏に浮かんできます。

 だからこそ、の「設計図発想」。
 来(きた)るべき将来をしっかり予想して先手を打っておく。これこそが10億円を目指す企業のトップが果たすべき役割なのです。

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ここに紹介したことのほか、『新装版 売上2億円の会社を10億円にする方法』では、経営者が企業の成長のために考えるべき「設計図」とは何かをコンパクトに紹介しています。ぜひ参考にしてください。