夕方の国会議事堂Photo:PIXTA

6月21日に通常国会は閉会、芸能人の不倫などの話題の陰に隠れて、政治・政策的な話への国民の関心は低下すると思いきや、そうはならなかった。マイナンバーカードを巡る不祥事が相次いで明らかになっていっているからだ。それにもかかわらず、「不安の解消」などと的外れなことを発言し、紙保険証の廃止や、さらには運転免許証との統合まで強行しようとしている岸田政権の支持率は大幅に下落。そもそも何が成果だったのか分からない広島サミットを受けて支持率が上昇したこと自体が理解不能であるが、そうした中で、多少は話題にはなったものの、シラッと決められ、静かに進められている政策がある。三位一体の労働市場改革である。(政策コンサルタント 室伏謙一)

「構造的賃上げ」という
聞き慣れない言葉を使う理由

 この三位一体の労働市場改革は、岸田政権の目指す賃上げのために進められることとされ、先日閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2023、いわゆる骨太の方針2023にも多く記載されている。

 賃上げを政権の重要課題と考えていることの表れということなのだろうが、結論から言えば、この三位一体の労働市場改革は賃上げにはほとんどつながらず、かえって多くの労働者の賃金を引き下げることとなり、貧困化、デフレ、そしてごく一部の賃金が大幅に上昇する高所得者と、賃金が上がらないその他大勢との分断が進むことにつながりかねないだろう。

 賃上げを進めたい岸田政権がそんな政策を進めるはずがないだろうと思われた方もおられるかもしれないが、なぜそんなことが言えるのか、以下解説していきたい。