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今年60歳になる課長は、定年退職後も65歳まで再雇用してもらい、今の会社に勤め続けようと思っている。しかし会社は業績不振で、再雇用する余裕はない状態だ。定年を迎えた社員が再雇用してもらうには、何か条件があるのだろうか。逆に、社員が再雇用を希望した場合、会社はそれを拒否できるのだろうか?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
 大手企業の子会社として独立、創業12年の物流会社。従業員数は100名。
<登場人物>
A:59歳。10年前他社から甲社に転職後、現在まで管理課長。
B:総務部長。
C:甲社の社長。
D:甲社の顧問社労士。

60歳に定年後、希望すれば65歳まで再雇用

 甲社の定年退職日は社員が60歳の誕生日を迎えた月の末日で、その後は希望すれば65歳の誕生日月の末日まで再雇用扱いで嘱託社員として働くことができる。Aは、今から20年前に3LDKの新築マンションを購入し、住宅ローンの残高があと1500万円残っていること、一人息子が今年の4月から大学生になるため学費がかかることもあり、退職後も嘱託として勤務を続けるつもりだった。

 1月下旬のこと。自席で執務を取っていたAの元にB総務部長(以下{B部長})から内線があり、話があるから今すぐ応接室まで来てほしいと言われた。

 B部長に呼び出されてから10分後。Aはあわてて応接室のドアを開け、ソファに座っていたB部長に向かって頭を下げた。

「すみません。遅くなりました」
「構わないよ。まあ座りなさい」

 AはB部長の向かい側にあるソファに腰かけた。

「ところで、お話って何でしょう?」
「A君は確か今年で定年だったよね?」
「はい。6月25日が私の誕生日なので、6月末で定年になります」
「定年後は仕事どうするの? 悠々自適とか……」
「とんでもない。まだ自宅のローンが残っていますし、子どもの学費でお金がかかります。それに入社して10年なので退職金も少ないですし、引き続き会社で働くつもりです」