テレビドラマ「3年B組金八先生」の伝説の回として今も語り継がれるのが、「腐ったミカンの方程式」の回だ。「腐ったミカンは周りも腐らせるからすぐ排除すべき」という論理で、不良生徒を他校へ放り出した中学校の姿勢に坂本金八先生は憤る。ところが、「経営の神様」と称された稲盛和夫氏は、組織の中に「腐ったリンゴ」があるなら排除も辞すべきではないという言葉を残している。金八先生に怒られてしまいそうな発言だが、その真意とは?(イトモス研究所所長 小倉健一)
ドラマ史に残る伝説の回
金八先生「腐ったミカンの方程式」
東京の中学校を舞台に、当時のさまざまな社会的問題に切り込み、1979~2011年に放送された大人気テレビドラマ「3年B組金八先生」。中でも第2シリーズ(1980~81年)での「腐ったミカンの方程式」(第5、6回)を記憶している人は多いのではないだろうか。
第2シリーズの生徒側の主人公は、加藤優(演じたのは、直江喜一氏)と松浦悟(沖田浩之氏)という2人の不良生徒で、「校内暴力でメチャクチャ荒れる荒谷二中の番長だった加藤が、『箱の中に腐ったミカンがひとつでも入っていると、ほかすべてのミカンが腐ってしまうから、すぐに捨てなければならない』という『腐ったミカンの方程式』で荒谷二中から排除され、桜中学に転校してくることに」(オンランメディア「QJWeb」20年6月5日)なった。
加藤は、坂本金八先生(武田鉄矢氏)や3年B組の級友と触れ合うにつれ、どんどん更生し、いいやつになっていく。実は、荒谷二中の校内暴力は暴力を振るう教師たちによって引き起こされていた面もあり、警察も教師側についたことから、生徒たちはひどい目に遭っていたのだ。
荒谷二中の生徒たちは、生徒全員で卒業式をボイコットして教師たちに一泡吹かせてやろうとたくらんだが、加藤はそれを知り生徒たちを説得しようとする。しかし、加藤が帰ってきたことで生徒側の不良たちが勢いづいてしまって事態は収拾がつかなくなり、加藤たちは警察に連行される、といった展開を迎える。
そんなストーリーが描かれる第2シリーズでは、多くの人がご存じのように、金八先生が「腐ったミカンの方程式」を猛烈に批判し、「ドラマ史に残る」と絶賛される名言がいくつも飛び出す。
ところが、「経営の神様」と称された稲盛和夫氏は、組織の中に周りも腐らせてしまう「腐ったリンゴ」があるなら、排除も辞すべきではないという言葉を残している。金八先生に激怒されそうな発言だが、実は「腐ったミカン」の話も「腐ったリンゴ」の話も根底ではつながっているのだ。
今回は、金八先生の名言を振り返りながら、稲盛氏の「腐ったリンゴ」発言の真意について読み解いていこう。