インフレ・円安の時代に入った今、資産を預金だけで持つことはリスクがあり、おすすめできない。「先行き不透明な時代」には、これまで投資に無縁だった人も資産を守り・育てるために資産運用を始める必要がある。『このままではあなたの現金の価値が下がる! インフレ・円安からお金を守る最強の投資』(朝倉智也著、ダイヤモンド社)が発売された。本書は、投信業界のご意見番が新しい時代を乗り切る「究極の運用法」をアドバイスするお金の入門書。大切なお金を守り増やすためには、どうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。
セゾン資産形成の
達人ファンド(セゾン投信)
世界株式アクティブファンドの3つ目の候補が「セゾン資産形成の達人ファンド」です。
このファンドは過去10年のトータルリターンが年率15.30%で、カテゴリー平均を3.21ポイント上回る運用実績があります。シャープレシオは0.93で、カテゴリー平均を0.21ポイント上回っており、運用の効率性も高いと評価できます。信託報酬は年率1.34%です。
「セゾン資産形成の達人ファンド」は非常にユニークなファンドで、資産クラスごとに優秀な運用会社を選定して運用を行うファンド・オブ・ファンズファンドでです。
下図は、同ファンドの資産配分の状況を示したものです。全体の約35%を運用するコムジェストは、フランスの独立系運用会社です。日本ではあまり名前を知られていませんが、ESG運用で高い評価を得ており、長期で優れた運用実績を上げていることで知られています。
また日本株の一部の運用は、国内の独立系運用会社スパークス・アセット・マネジメントが担っています。そのほかの運用会社の顔ぶれを見ても、資産運用の世界で長く実績を上げてきた会社が選ばれているという印象です。
ここで「大和住銀DC海外株式アクティブファンド」「キャピタル世界株式ファンド」「セゾン資産形成の達人ファンド」の組入国・地域を比べてみましょう。下図をご覧ください。
3本の内訳を見て気づくのは、「大和住銀DC海外株式アクティブファンド」は組入国に日本を含んでいないということです。「キャピタル世界株式ファンド」は2.8%、「セゾン資産形成の達人ファンド」は12.9%、日本を含んでいます。このほか、「セゾン資産形成の達人ファンド」は中国の組入比率が4.3%、インドの組入比率が5.0%など、新興国の割合が高めなことなどもわかるでしょう。
この中からどれを選ぶかは、皆さん次第です。
「日本には投資しなくてよい」と考える方は「大和住銀DC海外株式アクティブファンド」が候補になるでしょう。「やはり一部は日本に投資したい」という方は「キャピタル世界株式ファンド」か「セゾン資産形成の達人ファンド」から選ぶことになりそうです。
またアクティブファンドについては、インデックスファンドと比べると信託報酬の高さが気になるところです。
先にも触れましたが、トータルリターンは信託報酬控除後のものですから、ここでご紹介したファンドについては「コストに対して十分に見合った運用実績がある」と見ることもできます。
しかし、もし運用成績が低下した場合、毎年差し引かれる信託報酬が重くのしかかることも間違いありません。この点、「セゾン資産形成の達人ファンド」はアクティブファンドの中では信託報酬を抑えていると言えます。このような観点で候補を選別していくのも、1つの方法かもしれません。
(※本稿は『インフレ・円安からお金を守る最強の投資』の一部を抜粋・編集したものです)
SBIグローバルアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号(MBA)取得。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。1998年モーニングスター株式会社(現 SBIグローバルアセットマネジメント株式会社)設立に参画し、以来、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。SBIホールディングス株式会社 取締役副社長を兼務し、SBIグループ全体の資産運用事業を管掌する。主な著書に『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)などがある。