ビジネスの現場では、人前でハキハキと話せる「社交的な人」が有利だと思われがちです。しかし、台湾出身で、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャン氏の世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(神崎朗子訳)によると、「内向的な人」こそ、冷静さ・思慮深さ・協調性といったビジネススキルを兼ね備えているといいます。
内向型の生まれ持った強みを肯定し、勇気づける本書には、「目からウロコの内容に感動した」「自分らしく生きていけばいいと気づけた」と日本中から絶賛の声が集まっています。
今回は、読者から寄せられた仕事や人間関係の質問に対する、チャン氏の回答を公開します。(構成/根本隼)

本当に頭のいい人が絶対にやらない「低レベルな思考」とは?Photo:Adobe Stock

「速い=良い」とはかぎらない

読者からの質問 変化の激しい現代社会において、「静かで思慮深くあること」の重要性をどのように考えていらっしゃるでしょうか?

ジル・チャン氏 いま私たちは、情報過多で、スピーディーな行動がやたらと要求される「騒がしすぎる世界」を生きています。こうした環境下で、「静かで思慮深くあること」の重要性は、一見わかりにくいかもしれません。

 しかし私はこんな時代だからこそ、さまざまな場面で「静かな人」の力が求められていると感じています。

 私は、「本当に重要なものごとは、即座には起こらない」という信念を持っています。つまり、ものごとの「真の意義」というのは、短期的な指標ではなく、長期的な視点で評価しないと意味がないということです。

 毎日、対応しなければいけないことが次々と生まれていますが、必ずしも「いますぐやるべきタスク=一番重要」というわけではありません。むしろ、大事なものごとほど、時間をかけて冷静に取り組むべきなんです。これは、皆さんの日常生活や仕事上の経験からも明らかではないでしょうか。

本当に賢い人は、短期的な視点だけで思考しない

チャン氏 素早い行動やアウトプットというのは、その場では有効に感じられるかもしれませんが、長期的にはほとんど影響がありません。即応的なふるまいというのは、すぐに忘れ去られるものです。

 それだけでなく、短期的な行動は、「短絡的」に陥るリスクもはらんでいます。なので、賢明な人は、決して短期的な視点だけでものごとを考えたりはしません。必ず、中長期的な視点で冷静に粘り強く思考し、時間をかけてでもインパクトの大きなアウトプットをめざします。

 スピーディーさばかりが持ち上げられる現代社会ですが、いったん距離をとって考えたり、長期的な影響を考えて落ち着いてものごとに取り組んだりすることの重要性はむしろ増しているのではないでしょうか。

 目の前の変化にすぐ惑わされがちないまのような時代だからこそ、ぜひ「冷静な観察眼」や「戦略的思考」など、静かな人の力を発揮するよう意識してみてください