
世界デザイン機構(World Design Organization=WDO)が、次期理事長に日本デザイン振興会の津村真紀子氏を選出した。WDOは世界40の国・地域から200を超える関連団体や企業、教育機関が加盟する国際組織で、デザインを通じて社会課題の解決を目指し、国際会議の開催や調査研究などを行っている。世界のデザインが向かう先と、日本企業が直面する“デザインをどう組織に根づかせるか”という課題について、津村氏に聞いた。(聞き手/音なぎ省一郎、撮影/まくらあさみ)
世界的なデザイン組織に半世紀ぶりに日本人が選出
それが示す意味とは何か
――次期WDO理事長に選出されました。日本人としては故榮久庵(えくあん)憲司さん(1975〜77年)以来、約50年ぶりで、アジア人女性としては初となります。背景としてはどのような経緯があったのでしょうか。
WDOでは2019年から23年までの4年間、理事を務めていました。その間に「世界デザイン会議東京2023」で事務局長を務めましたので、私自身としては一度“やり切った”感覚もありました。
そんな中、かつて一緒に理事を務めていたインドの理事から「ぜひ立候補してほしい」と強く背中を押されたことが、今回のきっかけです。今はWDOメンバーの半数近くがアジア代表で、日本が果たす役割への期待も非常に大きい。そうした背景の中で、多くの方から「今こそ日本から理事長を」との声を頂きました。
――日本への期待が大きいのですね。それはどんな理由からでしょうか。
一つは、日本が長年にわたってデザインの国際交流に積極的に取り組んできたことです。特にグッドデザイン賞を通じて得たノウハウを基に、各国のデザイン賞創設を支援してきた実績は、WDOの中でも高く評価されています。
また、欧米のデザイン団体は時に“上から目線”だと感じられることがある一方で、日本はフラットで相手をリスペクトしながら関わる。その姿勢がアジア諸国にも広く支持されています。そうした背景もあって多くの国から後押しをいただきました。
――日本のデザインそのものへの評価はどうでしょうか。
日本のデザインは、しばしば“奥ゆかしさ”や“静かな美意識”として語られます。製品やサービスの細部に宿るさりげない配慮や、使う人に寄り添う姿勢、クラフトマンシップが発揮されていること、そして継続的な改善を積み重ねていく態度。そうした、日本らしい細部へのこだわりや姿勢が高く評価されていると感じます。
また日本のデザインに憧れる海外の学生も多く、「大学にぜひ教えに来てほしい」と要請を頂くことも少なくありません。単に造形の美しさだけでなく、“良いものをつくるための考え方”や“丁寧に積み重ねる姿勢”そのものに価値を見いだしてくれていると感じています。







