いくら良い出来事があっても、イヤな一言で台無しになる。――そんな偏りに疲れていませんか。快楽は鈍く、痛みは鋭い。私たちは何を手放せば、静かな満足を見失わずにすむのでしょう?。
IVEチャン・ウォニョン氏や俳優ハ・ソクジン氏の愛読書と話題となり、韓国で262刷、60万部を超え、「哲学ブーム」の火付け役となった書籍『求めない練習 絶望の哲学者ショーペンハウアーの幸福論』をもとに解説します。

快楽を求めるより苦痛を避けよ
一の苦痛は十の快楽と
同じほどの力を持つ。
――『求めない練習 絶望の哲学者ショーペンハウアーの幸福論』より
苦痛は快楽より強く、長く、はっきり感じられる。
ショーペンハウアーによれば、快楽や幸福は消極的で、苦痛は積極的な性質を持つからだ。
私たちは、幸せの最中には気づきにくいが、不幸にはすぐ気づく。
富や名誉があるときは当たり前に思い、失って初めてその価値を知る。
健康も同じで、健やかな胃は感じないのに、炎症が起これば痛みだけは明確だ。
虫歯の痛みは気になるのに、残りの健康な歯には注意が向かない。
「入るのはわからないが出ていくのはわかる」ということわざの通りである。
そばにあるうちは見過ごし、離れて初めてその大きさを知る。
幸福もまた、持っている間は鈍く、失って気づくことが多い。
その非対称ゆえに、人は喜びに酔うより、不幸の感情に振り回されやすい。
だからこそ、私たちの工夫は「快楽を足す」より「痛みを減らす」ほうに向けたい。
無理な約束をしない、境界を短く伝える、休む時間を先に確保する。
そして、失う前にすでにあるものを言葉にしておく。
今日の健康、穏やかな会話、困らなかった一件――小さな事実を三つ記録すれば、幸福の輪郭は濃くなる。
苦痛の力学を知ることは、悲観ではない。
傷を小さくし、今ある静かな満足を見落とさないための現実的な知恵である。
(本記事は『求めない練習 絶望の哲学者ショーペンハウアーの幸福論』をもとに作成しました)









