なぜ秦だけが中国統一を成し遂げられたのか?
【悩んだら歴史に相談せよ!】好評を博した『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)の著者で、歴史に精通した経営コンサルタントが、今度は舞台を世界へと広げた。新刊『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)では、チャーチル、ナポレオン、ガンディー、孔明、ダ・ヴィンチなど、世界史に名を刻む35人の言葉を手がかりに、現代のビジネスリーダーが身につけるべき「決断力」「洞察力」「育成力」「人間力」「健康力」と5つの力を磨く方法を解説。監修は、世界史研究の第一人者である東京大学・羽田 正名誉教授。最新の「グローバル・ヒストリー」の視点を踏まえ、従来の枠にとらわれないリーダー像を提示する。どのエピソードも数分で読める構成ながら、「正論が通じない相手への対応法」「部下の才能を見抜き、育てる術」「孤立したときに持つべき覚悟」など、現場で直面する課題に直結する解決策が満載。まるで歴史上の偉人たちが直接語りかけてくるかのような実用性と説得力にあふれた“リーダーのための知恵の宝庫”だ。
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秦の統一を可能にした「法家の改革」
――血縁を断ち、国家をつくる
群雄割拠の終焉
秦が掴んだ天下
紀元前221年、秦の始皇帝が中国全土を統一しました。
それまでの中国は、韓・魏・趙・斉・燕・楚・秦の7国が互いに覇を競う戦国時代。混乱の時代において、なぜ秦だけが他国を圧倒し、統一を成し遂げることができたのでしょうか。
「血縁」から「能力」への大転換
改革の立役者、商鞅(しょうおう)
その答えは、血縁に縛られた古い社会構造を捨て、能力と成果を基盤とする国家体制へと生まれ変わったことにあります。
この抜本的な制度改革を導いたのが、法家思想に基づいた「商鞅」という人物でした。
既得権益が阻む
「氏族制社会」の実態
当時の中国は、「氏族制社会」と呼ばれる構造に支配されていました。これは、政治や土地の支配権が血縁関係に基づいて世襲される制度であり、「本家と分家」=「主と家臣」といった関係が支配の単位でした。
この体制では、どれだけ有能でも血縁がなければ権力を握ることはできず、国家のトップですら地方豪族の協力なしには統治が不可能でした。
つまり、国家よりも一族の利権が優先される構造だったのです。



