1ドル=144円台を示すモニター(6月30日)Photo:AFP=JIJI

日銀だけが「緩和維持」で
円キャリー取引が再び活発に

 円安が再び進んでいる。ドル円レートは6月30日には約7カ月ぶりに145円台まで下落した。このところ持ち直し7月12日には約1か月ぶりに139円台をつけたが、円安基調は変わっていない。

 円安が進む原因は極めて明白だ。円で資金を調達してドル資産で運用する「円キャリー取引」が活発になっているからだ。

 これは本来は非常にリスクの高い取引だ。将来円高になると、金利差収入を超える為替差損が発生し、損失を被る危険がある。世界の主要国は、インフレ退治のために金利を引き上げてきた。したがってキャリー取引にはリスクが伴う。

 ところが、主要国の中で日本だけが金融緩和を維持してきた。そして日本銀行は新体制に変わっても、大規模緩和を継続すると明言している。このため、投機家は安心して円キャリー取引をおこなうことができる。つまり、日銀が投機家の利益を保証することによって、円キャリー取引をあおり、円安を招いているのだ。

 だが、異常な円安が止まらないのは、ほかに構造的な要因があるといわれている。その見方が妥当かどうかは、後で検討する。