円安145円台、株価高進
日銀の「緩和維持」背景
前週末6月30日、外国為替市場では円相場が約7カ月ぶりに一時1ドル145円台となり、週明け7月3日の日経平均株価も3万3753円(終値)と、33年ぶりの最高値を更新し、株価も高水準を維持している。
「緩和維持」を決めた6月16日の金融政策決定会合後の記者会見で、株価上昇と金融政策との関係を問われた植田和男日銀総裁は、「金融緩和は以前から変わりなく続けられている中で株価が顕著に上昇している点を踏まえると、足元の株高は金融政策の影響ではなく、先行きの経済、企業収益の改善期待によるもの」と説明した。
しかし、金融政策は変わらなくても、外部環境の変化によってその効果が大きく変わってくることが見過ごされていないか。
第一に、植田新体制が始まって以降も、金融緩和を継続する姿勢が強調されてきた。それ以前に高まっていた政策修正の観測が後退を迫られたことで、円安と株高が同時に進んだ面がある。
第二に、日銀が金融緩和を維持する一方、米国では金融引き締めが続いていることから、日米金利差のさらなる拡大が円安傾向を生み、それが株高傾向を強めている面がある。
そして第三に、高い物価上昇率の下、中長期のインフレ期待が高まる中で、金融緩和を維持すると、実質金利(名目金利-期待インフレ率)が低下して円安、株高の流れを後押しする。いわゆるリフレ観測の高まりだ。
金融緩和が行き過ぎた円安、株高を生むリスクはあり、2%物価目標達成を掲げる中でも金融政策運営にバリュエーションが考えられてしかるべきだ。