エルドアン大統領が再選されたトルコ。足元の景気は回復の動きをみせる。ただし、新たに任命された財務相、中央銀行総裁の下で3年3カ月ぶりの利上げに踏み切った。景気を崩さずにインフレを抑制し、通貨リラを復権させることができるか。その道は険しそうだ。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)
南東部の大地震を乗り越え
景気回復が続く
トルコでは、今年2月に南東部のシリア国境付近において大地震が起きた。多数の死者や被災者が発生するとともに、同国内だけで最大で対GDP(国内総生産)比1割強に達する復興費用を要するとの試算が示されるほどの甚大な被害が生じた。
よって、短期的に景気に深刻な悪影響が出ることが懸念されたが、1~3月期の実質GDP成長率は前期比年率1.26%と、前期(同3.80%)からペースこそ鈍化するもプラス成長を維持した。コロナ禍からの景気回復も続いていることが確認されている。
また、中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率は4.0%と前期(同3.5%)から加速しており、一見すれば足元の景気は底入れの動きを強めているようにみえる。しかし、これについては、昨年後半の同国景気が頭打ちの動きを強める展開が続いた影響を考慮する必要がある。
外需においては、国際金融市場における継続的なリラ安が価格競争力の向上につながっている上、昨年来のウクライナ情勢の悪化をきっかけとする欧米などによる対ロ経済制裁の強化を受けて、同国からロシア向けの貿易が拡大するなど事実上の『窓口』となる動きがみられている。