トルコ経済が7四半期連続プラス成長、景気回復はロシア富裕層のおかげ?Photo:PIXTA

オミクロン株の感染も収まり始め、リラ安もあり底入れしつつあるトルコ経済。しかし、その中身を子細に見ていくと、手放しでは喜べない。悪化しつつあるファンダメンタルズを分析する。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濱 徹)

リラ安で財輸出と
外国人観光客数伸びる

 コロナ禍のトルコ経済は、度重なる感染拡大に直面してきたものの、エルドアン政権は実体経済への悪影響を最小化すべく行動制限の対象を限定する対応を取った。

 そのため、コロナ禍の悪影響が最も色濃く表れた一昨年も経済成長率は1.8%とプラスを維持するなど、一見すればコロナ禍対応に成功したかにみえる。

 しかし、これは2019年の経済成長率が前年に発生したいわゆる「トルコ・ショック」の余波で0.9%にとどまるなど下振れしたため、その反動がプラスに影響したことに注意する必要がある。

 他方、トルコでは中国による支援も追い風にワクチン接種が進んでおり、ワクチン接種を前提に経済活動の正常化を図る「ウィズ・コロナ」戦略が採られた。加えて、過去数年にわたる通貨リラ安による価格競争力の向上も追い風に、財輸出のみならず外国人観光客の受け入れも進んできた。

 結果、昨年の経済成長率は11.0%と10年ぶりの2ケタ成長となるなど、高成長を実現している。統計のゲタを加味しても堅調な景気回復が確認されるなど、コロナ禍の克服は着実に進んでいる。

 しかし、そうした景気回復の裏で悪化しつつあるものも少なくない。次ページからはトルコ経済の現状を子細に分析していく。