岸田文雄首相Photo:JIJI

マイナンバーカードと健康保険証を一体化する「マイナ保険証」に対して、国民から不安の声が絶えない。岸田首相は会見で国民の不安払拭に努める考えを示したが、専門家から見て、マイナ保険証の何が問題なのか。国立情報学研究所の佐藤一郎教授は「マイナ保険証はマイナカードの利便性を下げる」という。(国立情報学研究所・教授 佐藤一郎 構成/梶原麻衣子)

マイナ保険証は
マイナカードの利便性を下げる

 マイナンバーカード(マイナカード)と健康保険証の一体化について、国民からの疑問や非難の声が大きいことから、岸田首相が2023年8月4日に記者会見を開催。紙の保険証を2024年秋に廃止するという当初の予定は当面維持した上で、保険証の代わりに発行する「資格確認書」の有効期限の上限を延ばすことを発表しました。

 政府もアナウンスしている通り、マイナカードを持たない場合、紙の保険証がなくなっても、資格確認書があれば用は足ります。が、その場合、「何のために保険証との一体化を図るのか」という疑問に直面します。

 保険証を廃止してマイナカードと一体化すれば、確かにマイナカードの普及率は上がるでしょうが、同時にマイナカードの利便性を下げてしまうことが問題です。