8月8日、政府はマイナンバーカードをめぐるトラブルを受けた総点検の中間報告を公表。マイナ保険証に他人の医療情報が誤登録されたケースが新たに1069件確認されたと発表し、累計は8441件になった。政府は「人為的なミス」を強調するが、国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、「マイナンバーの誤登録は予期できた構造的な問題」だという。(国立情報学研究所・教授 佐藤一郎 構成/梶原麻衣子)
マイナカードを返納しても
情報のひも付けは解除されない
マイナンバーカード(マイナカード)の誤登録問題が大きく取り沙汰され、カードを「返納」する人たちも増えてきています。しかしカードを返納したところで情報のひも付けが解除されるわけではなく、あまり実質的な意味はありません。あくまでも「行政に対する抗議」の意味合いが強いのでしょう。
マイナンバー制度とマイナカードの運用は分けて考える必要がありますが、その源流が住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)という仕組み自体にあることを指摘する人は多くありません。
このシステムは、マイナンバーと同じく、全国共通で本人確認ができる仕組みを構築するためのものです。住民基本台帳に記録されているすべての人に固有の11桁の数字(住民票コード)を付与しました。1999年に改正された住民基本台帳法に基づき、2002年から稼働し、いまはマイナンバーに引き継がれています。
マイナンバーやマイナカードにまつわる問題は、住基ネット時代の総括をしなかったことによって生じています。