受験戦争が熾烈な韓国だが、尹錫悦大統領が「学校の授業で扱わない内容は、入試問題から排除するように」と異例の言及を行った。韓国の入試改革は成功するのか。中国では習近平主席による教育改革「塾・予備校の廃止」によって、タピオカ屋を装う「闇予備校」やタピオカ配達員を装った家庭教師が横行しているという。(ジャーナリスト 池上 彰、増田ユリヤ 構成/梶原麻衣子)
尹錫悦大統領が
大学入試の試験問題に異例の言及
増田 韓国は受験戦争が熾烈なことで知られていますが、尹錫悦大統領が、大学入試の試験問題に異例の言及をしましたね。
池上 「学校の授業で扱わない内容は、出題から排除するように」という指示を出しました。韓国では試験に「キラー問題」と呼ばれる難易度の高い問題が出題されるそうで、こうした問題に対処するのは学校の勉強だけでは足りない。多くの若者が塾や予備校へ通わざるを得ない状況になっています。
増田 日本でも大学入試の「難問、奇問」が話題になったことがありますが、大統領が自ら指示を出す以上は、相当な社会問題に発展しているということでしょう。
池上 教科書に沿った易しい問題では点差がつきにくく、受験者をふるいにかけるのが難しくなります。優秀な学生の選抜には点差のつく試験問題が必要で、解答テクニックが必要なキラー問題を出題するのが一番簡単です。
普通の学生が解けない難問で点数を取るためには、塾や予備校に行かなければならない。日本以上の学歴社会である韓国では、大学入試が文字通り人生を左右します。親は子供をいい大学に行かせ、いい企業に就職させるために、子供を塾や予備校に通わせる。すると「小学生のうちから大学入試の準備が始まる」とまでいわれる受験戦争はますます過熱し、キラー問題もなくならない。そういうサイクルに陥っています。