総合化学大手の中でも先陣を切って構造改革に取り組む、業界のリーダーである小林社長に日本の化学業界の生き残り策を聞いた。
──シェール革命の到来で日本の石油化学産業は生き残れるのか。
2017年ごろから米国産のシェールガス由来の石化製品の世界展開が始まれば、コスト競争力でまったく歯が立たない日本勢には大打撃となる。もはや「石油化学」という言葉自体がそぐわない、「天然ガス化学」の時代になる。
そうした中で、強みの触媒技術などを生かし、天然ガス由来では作れない製品(ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)で日本がスタンダードを取れれば、米国勢と戦える可能性はある。日本の石化コンビナートは世界でも特異なものとして生き残れる。
一方で、事業構造の転換に全力で取り組まなければいけない。当社は重化学工業の割合がまだ50%あるが、日本は原料もなければ市場もない。技術が成熟しているし、どのみちエネルギー多消費型産業は日本で成り立たない。国内の過当競争から脱却して、アジア展開を急ぐ。
──化学産業が国内で打つ手立ては何かないのか。
食や農業や医療など化学の中でもソフト化したもの、もしくはエレクトロニクスや航空産業などニッチだがきらりと光るもの、これらを徹底的に強くしなければならない。そして日本らしい部材をうまく結合して新しい提案を仕掛けていく。これらを石化事業の再構築と併せて途切れないよう実行することが重要だ。
当社でいえば、5~6年前から汎用的な石化製品の事業撤退を数多く断行してきた。もし今も続けていたら大赤字。手術もできなくなってから、ただクローズする悲劇は終わらせなければ。遅きに失するのが一番悪い。