新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状、いわゆる「新型コロナ後遺症(以下、後遺症)」の典型例は疲労感や味覚・嗅覚障害、集中力の低下など多種多様だ。
成人の後遺症に関しては、症状や対応方法が徐々にわかってきたが、当初、感染者が少なかった小児については後手に回っていた。しかしオミクロン変異の流行以降、小児でも感染者が増え、同時に後遺症に悩むケースも増えている。
新型コロナウイルスのPCR検査陽性例の男女(男児52.8%、平均年齢8.1歳)の1カ月後、半年後で追跡調査を行った米国の報告では、小児でも成人と同様に味覚・嗅覚障害、倦怠感などの後遺症を認めている。
小児・若年層では心臓の筋肉にウイルスが感染して生じる「心筋炎」が多く、発症リスクは同じ時期にPCR検査を受けた陰性例の3.1倍に増加した。脱毛、発疹、下痢なども多く認められた。
特に気になるのは、小児多系統炎症性症候群(MIS-C:ミスシー)が陰性例のおよそ3倍に上ったことだ。
MIS-Cは全身性の炎症疾患で、主な症状は発熱の持続、激しい腹痛、おう吐、下痢、発疹や結膜炎、舌の腫れなどだ。コロナ禍の早期には、乳幼児に生じる「川崎病」との類似が指摘されていたが、MIS-Cは学童期~青年期の若年層で発症する、強い腹痛がある、などの相違点がある。
日本でも2022年以降、MIS-Cと診断される例が急増しており、現在、日本小児科学会などの関連学会が実態調査に乗り出している状況だ。
現時点で、MIS-Cの診断基準や治療方法は確立されておらず、問診からアタリをつけて検査を繰り返すしかない。子どもがCOVID-19に罹患したら、発熱や咳など風邪様の症状以外にも発疹、舌の腫れや結膜の充血、腹痛や下痢などの消化器症状がないか、全身を確認しておくこと。
また、COVID-19が無症候性~軽症でも、MIS-Cを発症したケースもある。時と場合に応じたマスク装着、手指洗いなど基本的な感染対策もお忘れなく。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)