黒い扉のナイトクラブの上には灰色をした4階建てのオフィスビルがある。靴下・下着の工場経営で知られるトルコの実業家がこのビルで立ち上げた会社は、やがてロシア産石油を輸送する世界有数の船主へと変貌した。ベクス・シップ・マネジメントというこの企業は2021年以降に37隻の船を購入。その多くは老朽化した石油タンカーだ。2年余りの間に5億ドル(約730億円)以上をつぎ込み、保有する船団の価値は10倍に増えた。世界中に石油を供給し続けてウクライナでの戦費を賄おうとしているロシアにとって、ベクスのような企業は決定的な役割を果たしている。現在、この非公式の船団を構成するタンカーは世界中に何百隻も存在し、その多くはトルコのほか、ギリシャ・インド・アラブ首長国連邦(UAE)の企業が船主となっている。こうしたタンカーは通常の業界基準の範囲外で運航して西側の制裁を回避するケースが多く、世界の商業海運の約90%に保険を提供する世界的ネットワーク「P&Iクラブ(船主責任相互保険組合)」に大抵は加入していない。中には戦争開始後に設立されたロシアの同様の保険システムを利用している船もある。
制裁回避トルコ闇タンカー、ロシアの戦費支える
ウクライナ侵攻後に数十隻のタンカー購入、「幽霊船団」には老朽化や無保険のリスクも
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