加えて、仮にうまくアクティブリターンを稼ぐAIが登場したとして、これが容易に別のAIに模倣されるのではないかという、別の高い障壁が存在する。

 もちろん、AIの「人間がやるようなことを人間以上にうまくやる」能力を過小評価してはならない。

 アクティブリターンを稼いだり、稼げなかったりするような「揺らぎ」を商品群に与えながら、たまたまうまくいっているものを巧みに強調して会社のブランド価値を高めるような経営判断も(これは露骨ではないが、実際の運用会社がすでにやっていることだ)、AIには容易だろう。

ロボアドバイザーの利用が
ラップ運用のつもりなら100%ダメ

 さて、利用者の「世代」ははっきり言ってどうでもいい。何歳の人が投資しようと、同じ時に同じものに投資していれば、投資の成果は同じである。記事を作る上では、あるいは運用商品をマーケティングする上では仕方がないのかもしれないが、資産運用を世代と関連付けるのはつまらない(有益でない)問題意識だ。

 世代論を離れるとして、AIを利用すると称するロボアドバイザー的なサービスを利用することの可否はいかがなものだろうか。

 これは、ありていに言って「人間がやるよりもマシに見えるラップ運用」の利用に過ぎない。だとすると、全く褒められたものではない。

 ラップ運用がダメな理由は、一般に、(1)運用者(プログラムも含めて)に特別なアセットアロケーション能力は存在しない、(2)利用者は中身を十分把握できていない、(3)運用手数料が割高である、(4)そもそも運用を他人任せにしようという根性がいけない、の4点だ。最後の一つには、筆者の好みが反映されているのでさておくとして、利用者にはせめて(3)についてだけでも考えてみてほしい。

 比較の対象は、全世界の株式に投資するインデックスファンドの投資信託。グローバルに資金運用する海外の大きな機関投資家の「平均ポートフォリオ」に近い投資内容の商品だ。今や、このカテゴリーの商品で最割安な商品は運用資産額に対して年率0.05775%以下(税込み)のコストで運用が可能だ。

 つまり、100万円を年間578円で運用できるのだ。残高の大きなものは既に1兆3000億円を大きく超えている。知っている人は、有利な運用商品を既に利用しているのだ。