中国のバランスシート不況
不動産セクターに留まる
バブル崩壊後の日本経済では、長期停滞の契機として「バランスシート不況」が指摘された。このバランスシート不況が中国でも起きつつあるのではないか、という議論が盛り上がっている。投機抑制策導入から始まった不動産市場の調整は止まる気配がなく、不動産開発業者の資金繰り難が連日紙面を賑わす。7月には物価もマイナスに転じた。
ただ今のところ、中国の住宅価格の下落は限定的で、日本のバブル崩壊後のような大幅な下落は回避出来ている。企業と家計の債務残高も減少しておらず、伸び率が低下するに止まっている。
企業や家計が過剰債務の返済を優先させ、借入や支出を手控える状況を「バランスシート不況」と定義すると、中国ではそうした動きは今のところ不動産セクターに限られている。
不動産以外のセクターでは、過剰債務や余剰設備を抱えている状況ではない。中国の企業セクターは、国有企業を中心とした過剰投資によって一時期深刻な過剰債務を抱えていたが、2016年以降の政府主導の債務削減策が一定の成果を挙げている。
これと比べ、日本のバランスシート不況は規模と拡がりという面でより大きかった。バブル崩壊後は幅広い業種で債務、設備、雇用という深刻な「3つの過剰」の調整に苦しんだ。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」、「東京は世界の金融センターに」といったユーフォリオに浮かれ、不動産に止まらず株式市場も巻き込んで経済全体がバブルを謳歌した結果だ。