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スマートフォンの理想と現実

サムスンら大手ベンダーが新端末の発表を見送り
新興勢力の中国勢には未だ“ビジョン”見えず

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2013レポート【前編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第45回】 2013年3月5日
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ジャーナリストやアナリストで賑わうファーウェイのプレスカンファレンス Photo by Tatsuya Kurosaka

 またそうした構想が不在であるとしたら、ブランディングをはじめとしたマーケティング戦略や、それに伴うコミュニケーション戦略も、十分に練り切ることはできないだろう。結果として、ファーウェイのエンジニアが、自分たちの好きなように製品を作り、また自分たちの好きなように売ろうとしているという印象が、残ってしまった。

 難しいのは、そうしたビジョンが不在な状況でも、世界的にはまだまだスマートフォンは売れる、ということ。ファーウェイは言うまでもなく中国という巨大な市場を擁しており、その市場でシェアを確保するだけで、世界市場で価格競争できるだけのスケールメリットや部品調達の市場支配力を有することができる。

 また彼らは、インドやアフリカといった新興国の通信産業において、基地局などの通信機器をからめた普及戦略を進め、一定の成功を収めてきた。こうした市場では、PCをスキップしてスマートフォンやタブレットの普及が見込まれている。そこでも強みを見せることは間違いない。

 ただ、そうした世界市場における支配力を背景に、ビジョンの確立やマーケティング戦略の立案など、製品開発における基礎的な所作をおざなりにしたままでは、おそらく先進国市場での普及拡大は容易ではないだろう。

 また、ポスト・スマートフォンに向けた動きが少しずつ見え始めた中、ライフスタイルの模索と提案ができなければ、新しいパラダイムへの対応もままならないように思える。よりはっきり言えば、今後の彼らには「何を作ればいいのか…」という局面が、訪れかねないということだ。

 実際私たちは、他ならぬ日本市場で、その光景を目の当たりにしている。かつてフィーチャーフォン時代に肩で風を切っていた日本の端末メーカーの多くが、スマートフォンというパラダイムシフトへの対応に失敗したことは、選択肢を失ってしまったという消費者としての実感からも、明らかである。彼らにそれと同じことが起きないとは限らないのだ。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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